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見えないキカイ Vol,5 「粋流」
story
その速度、実に秒速50センチメートル。
身体には血液に乗って様々な物質が流れている。
酸素、赤血球、白血球、血小板……。その中に、「感情」が混じっていることを彼は知っている。
「流れが悪い」という言葉にもあるが、流れが滞ると、人は途端に支障をきたすようになる。
他人を妬み、手に入らないものを欲しがり、執着した結果あまつさえ奪おうとする。
全くもって粘着質この上ない。
彼はそういう時、境界の不確定な腕を人の心臓に差し入れ、心の「澱」をとる。
腕から吸い取られた「澱」は彼の身体を通り、沈殿し、彼自身の原動力となる。
[移動するときはカヌーのような挙動で進む]
[推進装置兼濾過装置]
[”粋”質検査結晶]
穢れの落ちた人は純粋、純真というべき感情をふと思い出す。
一体何をイラついていたのか、すっかり巡りの良くなった身体と頭で、おもしろげなことなどを考え始める。
うっかり流れがよくなりすぎて「宵越しの金は持たない」人間も何割かでてくることもあるが……
彼自身には関心のないことだから、顔のような部分をむけて空中に佇むだけである。
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